眼瞼下垂
まぶたを上げる機能の低下によって、まぶたが下がり、視野の狭まりや見え方の低下などを引き起こすのが「眼瞼下垂」です。
眼瞼下垂の治療では、基本的に手術が必要になります。
当院では、挙筋前転術、前頭筋吊り上げ術、余剰皮膚切除術といった術式をご用意し、原因に応じて使い分けます。
これって眼瞼下垂かな? セルフチェック
- まぶたが重く、目が開けにくい
- まぶたを持ち上げると見やすい
- 眉毛の位置が上がり、額のしわが目立つようになった
- 二重の幅が広くなった
- 上まぶたが窪んだ
- 頭痛、肩こり・首こりがひどい
- 目をよく擦る
- 自然とあごを上げて見ている
- 周囲から「眠たいの?」と言われる
- ハードコンタクトレンズを長年使用している
一つでも該当する方は、眼瞼下垂の可能性があります。
眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂症は、眼瞼挙筋の力が生まれつき弱いといった先天的な原因、加齢・長期にわたるハードコンタクトレンズの装用・病気などの後天的な原因によって引き起こされます。
眼瞼下垂症の原因になる病気としては、重症筋無力症、動眼神経麻痺などが挙げられます。
眼瞼下垂の3つの種類
まぶたを上げる機能の低下は、以下のような要因によって起こります。
先天性の眼瞼下垂
先天的に、まぶたを上下させる筋肉(上眼瞼挙筋)の発達不全があったり、神経障害があることで、まぶたが下がってしまうタイプです。
後天性の眼瞼下垂
加齢、長期にわたるコンタクトレンズの使用などによって、上眼瞼挙筋の筋が緩んでしまい、まぶたが上がりにくくなるタイプです。
その他、白内障、緑内障の手術を受けたことがある人は、後天性の眼瞼下垂を起こしやすい傾向にあります。
偽眼瞼下垂
まぶたが下がっている(眼瞼下垂のように見える)けれど、まぶたを上げる筋肉などに異常がないタイプです。
加齢による皮膚のたるみ、先天的な眼球の小ささなどを原因として起こります。
眼瞼下垂の症状
3.5mm以下 軽度の眼瞼下垂
- 症状:
- まぶたが重く感じる
- 外見上の変化:
- 二重の幅が広くなる
2mm以下 中等度の眼瞼下垂
- 症状:
- 31%の上方視野欠損
眉毛を上げて目を開くようになり頭痛を伴う - 外見上の変化:
- 眉毛の位置が高くなり額のしわが目立つ
1mm以下 重度の眼瞼下垂
- 症状:
- 40%の上方視野欠損
あごを上げて物を見るようになり肩こり、首こりを伴う - 外見上の変化:
- 目の上が窪む
眼瞼下垂の治療
眼瞼下垂症は点眼などの薬物療法で治すことはできません。患者様の年齢や疾患の進行具合により術式をご提案させていただきます。
手術の流れ
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1.手術の決定
自覚されている症状、視野に関する日常生活でのお困りごとなどをお伺いした上で、目・瞼の状態について診察を行います。
手術の適応となれば、手術日を決定します。 -
2.術前検査
術前検査として血液検査を行い、B型肝炎、C型肝炎、梅毒などの感染の有無を調べます。
これらに感染していても手術は可能です。手術後の器械の洗浄・滅菌方法が変わるため、ご協力いただいております。
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3.手術のご説明
手術日の前にお越しいただき、手術について改めて詳しくご説明いたします。
手術前後の注意点などもお伝えしますので、ご安心ください。 -
4.手術当日
点眼麻酔をかけます。瞼に、仕上がりのデザインをいたします。目のまわりを消毒し、注射麻酔をかけます。
手術を行います。手術は片眼30分ほどで終了します。
その後、体調に問題ないことを確認できれば、ご帰宅いただけます。
眼帯を装着していただきますので、気になる方はサングラスなどをお持ちください。
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5.手術翌日~1週間後
手術の翌日、ご来院いただき、診察・検査で状態を確認いたします。
また感染を防ぐための点眼薬を処方いたしますので、正しくお使いください。
洗髪・洗顔などの許可については、随時お伝えしていきます。
また、1週間後にもご来院いただき、診察・検査を行います。
通常、このときに抜糸をします。以降は数カ月に1回、ご来院いただき、経過を確認します。
<眼瞼手術のダウンタイム>
腫れは翌日にピークを迎え、その後1週間ほどかけて、徐々に軽減していきます。内出血が生じた場合も、2週間程度で治まります。
傷痕は1カ月程度で落ち着き、半年後にはほとんど目立たなくなります。
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注意事項
- 感染を防ぐため、手術前後の点眼薬を正しくお使いください。
- 手術翌日は、必ず受診してください。
- 眼帯は、手術翌日の受診まで外さないでください。
- 洗顔・洗髪・入浴はしばらくお控えいただきます。手術翌日の受診時に、再開の目安をお伝えします。
- 手術後、ご帰宅されてから痛むということはほとんどありませんが、痛みを感じたときには痛み止めを飲んでください。
- 手術1週間後に抜糸を行います。
- 手術後、ご自宅で予期せぬ異常を感じたときには、すぐに当院にご連絡ください。
眼瞼手術のメリット・デメリット
メリット
- 視野が広くなる(回復する)
- 姿勢が良くなり、眼精疲労が軽減する
- 車などを運転するときの負担が軽減される
- 目がぱっちり、大きく見える
デメリット
- 過度に眼瞼挙筋腱膜を短くすると、目を閉じにくくなることがある
- 半年ほどでほとんど目立たなくなるが、傷痕が残る
Q&A
Q手術中に痛みはありますか?
Aまぶたに局所麻酔の注射をする際には、チクッとした痛みがあります。
Q車の運転・仕事・運動はいつごろからできますか?
A車の運転は、手術翌日の診察で眼帯をはずしてからは可能です。
事務作業のようなお仕事は、やはり手術翌日からしていただいて問題ありません。
力仕事や運動などについては、まぶたの腫れが落ち着く術後2週間くらいまでの間は控えていただいた方がベターです。
患者様の状況によっても異なりますので、詳しくは医師にお尋ね下さい。
Qキズは残りますか?
A厳密にはキズは残ります。ただし実際上は、ほとんど目立たなくなると言って良いと思います。
術後1週間目の抜糸後にはキズは少し目立たなくなり、術後2週間もするとかなり気にならなくなることが普通です。
また、術後日が浅くキズが目立つ時期でも、目を開いている時はキズは二重の奥に隠れて見えませんので、キズが外から見えるのは目を閉じている時だけとなります。
通常、キズの赤みが完全に消えるには術後6か月程度を要します。
Q眼瞼下垂は再発することはありますか?
A瞼は加齢によって下がっていきますので、再発する可能性はあります。再手術を行うことが可能です。
眼瞼内反症
内反症は、一般的には「逆まつげ」と呼ばれる症状で、睫毛(まつげ)が何らかの原因で角膜(くろめ)に接触した状態をいいます。
症状
- 目の異物感、痛み
- 目やに
- 目の充血
逆さまつ毛によって、角膜が傷ついてしまいます。慢性的に角膜が傷ついていると、将来的な視力の低下につながる可能性があります。
原因
睫毛内反症は生まれつきのものです。
一方で眼瞼内反症は、加齢に伴う組織の緩みによって生じます。
治療
睫毛の接触が軽度であれば定期的に睫毛を抜去して対応しますが、内反が強くなってしまった場合は手術が必要になります。
眼瞼内反症の手術
基本的には手術による治療となります。局所麻酔下での日帰り手術です。
眼瞼外反症
外反症とは、下の瞼が外側に向かって捲れてしまっている状態をいいます。
症状
- まぶたの裏の赤い部分(結膜)の露出
- まぶたが十分に閉じられない
- 目の乾燥や充血
原因
顔面神経麻痺、加齢による組織の弛緩、外傷などが主な原因です。
治療
眼瞼外反症の手術
外反の程度により、切除範囲、位置も変わります。術後の疼痛は極めて稀です。一週間程で抜糸しますが、この間腫脹(眼瞼の腫れ)は徐々に吸収されていきます。
麦粒腫(ものもらい)・霰粒腫
麦粒腫(ものもらい)
症状
- 瞼が赤く腫れている
- 瞼が痛む
- 目が充血している
- 目やにが出る
原因
黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの細菌に感染することで起こる炎症で、体調に問題がなければ細菌の影響を受けずに済みますが、疲れやストレスが溜まっていたり、睡眠不足だったりすると、目の腫れや痛みなどの症状を引き起こします。
治療
点眼治療や軟膏、内服薬などで治療を行います。化膿している場合には、切開して排膿することもあります。
霰粒腫
症状
- 瞼が腫れている
- 目に異物感がある
- 瞼が痛む
原因
マイボーム腺とは瞼の縁にある分泌腺のことで、これが脂肪で詰まることで分泌物が溜まって、しこりや腫れが生じます。
麦粒腫(ものもらい)と似た状態となりますが、霰粒腫ではあまり痛みが生じないのが特徴です。
治療
しこりが小さければ自然に治る場合もありますが、経過中に感染を起こして化膿性霰粒腫を発症している場合には、抗菌薬の点眼や軟膏を使用します。大きい場合には、ステロイドの注射や手術による摘出が必要になる場合があります。
麦粒腫(ものもらい)・霰粒腫は人にうつらない
麦粒腫(ものもらい)、霰粒腫は目のまわりを不衛生にしていることで起こるため、他の人にうつることはありません。
ウイルスが原因のもの、例えば「はやり目」などはうつりますが、雑菌や脂肪の固まりが原因である、麦粒腫(ものもらい)・霰粒腫はうつりませんのでご安心してください。
眼瞼けいれん
目の周囲の筋肉が痙攣(けいれん)して、目が開けにくくなったり、瞬(まばた)きがうまくできなくなったりする疾患です。初期にはドライアイと似通った症状がみられます。
- 初期には
- まぶしい、目をつぶっていた方が楽、目が乾く、目がショボショボするなど多様で、ドライアイと似通った症状がみられます。
- 進行すると
- 自分の意志で目を開けようとしても、目を開けられなくなり、手を使って開けなければならない場合もあります。
症状
- まばたきが多くなる
- 目を開けているのがつらい、開けていられない
- 目を閉じていたほうが楽
- 自分の意志通りに目が開けられない
- 勝手に目が閉じてしまう
- 歩いていると人・物とぶつかる
- まぶしい、目がうっとうしい、ショボショボする、乾く
原因
脳の深部(大脳基底核)の神経回路の異常とされますが、まだ詳しくは解明されていません。
治療
薬物内服療法
症状が軽い場合には抗パーキンソン薬、抗コリン薬、向精神薬などを服用します。服用しても改善されない場合には、次に紹介する「ボツリヌス療法」をお勧めすることになります。
ボツリヌス療法(ボトックス注射)
症状を起こしている筋肉に、ボツリヌストキシンを注射する「ボツリヌス療法」によって治療します。筋肉の過剰な働きを抑えることで、目を開きやすくします。治療にかかる時間は約5分で、次の日から普段の生活に戻っていただけます。
80%以上の方の症状を改善することができますが、効果の持続期間は3〜4ヶ月なため、定期的な注射が必要となります。
ボトックス治療は多くの方に効果のある治療ですが、注射の量が少ないとほとんど効果が出ず、多すぎると不必要な筋肉までも麻痺させてしまう等の副作用が出ます。
他にも、合併症や副作用には下記のようなものがあります。
代表的な合併症・副作用
- 眼の閉じにくさ
眼の乾燥が続くため、ドライアイの治療を並行して続けます。 - 眼の開けにくさ
こするなどして、薬が広がった場合に引き起こされます。涙が止まらなくなることも有りますが、治療を行うことで回復を促します。
合併症が起きた場合には適宜処置していきますが、このような合併症は仮に起きても、特に重篤かつ深刻な結果に至ることはまず考えられません。ボトックスの効果が無くなるころに合わせ消失します。
合併症を全て把握することは不可能なためリスクは完全ではありません。
顔面神経麻痺による眉毛下垂
何らかの理由により顔面神経が麻痺した状態を「顔面神経麻痺」といいます。顔面神経は顔の筋肉や表情を制御する重要な神経であり、麻痺が起こるとその制御が妨げられ、様々な症状が現れます。
顔面神経麻痺により、眉毛が下がる状態を『眉毛下垂』といいます。
症状
- 眉毛の位置の不均一性
- 通常、顔面神経が正常に機能している場合、眉毛は表情や感情に合わせて動きます。しかし、麻痺が生じると眉毛の位置が均一でなくなり、特に眉毛が下垂することがあります。
- 表情の変化
- 顔面神経の麻痺により、顔の半分が表情を作ることが難しくなります。笑顔や怒りなどの表情が影響を受け、眉毛が下がることがあります。
- まばたきの困難
- 顔面神経麻痺が進行すると、まばたきが困難になることがあります。これにより、目の乾燥や異物感が生じる可能性があります。
治療
この症状が現れた場合、早期の診断と治療が重要です。治療方法には、薬物療法、物理療法、手術などがあります。個々の症状や原因に基づいて、最適な治療法をご提案いたします。
手術
「眉毛挙上術」といって、眉毛の上、または髪の毛の生え際を切開して眉毛の位置を上げる静的再建術を行います。眉毛の麻痺は難治性で、上まぶたも下垂して視野の制限にもなるため、もっとも行われる術式です。皮膚を切除してつり上げる方法が一般的ですが、特殊な糸や筋膜を使用して行う場合もあります。
眼瞼手術について
当院では、患者様が安心して手術を受けていただけるよう、全ての手術を眼科用手術顕微鏡を用いて行います。
様々な術式の中から、患者様の年齢や目の状態、進行度により最善の方法をご提案させていただきます。
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眼瞼下垂の手術
外れている挙筋腱膜を瞼板に縫い付ける手術やたるんでいる上眼瞼挙筋と瞼板筋を同時に縫い縮める手術などがあります。
加齢により皮膚が垂れ下がっている場合でも、筋力に問題がなければ余分な皮膚を切除して縫合するだけの手術も可能です。手術自体の所要時間は通常片目で30分程度で日帰りで対応可能です。
眼瞼下垂の術前・術後の写真
眼瞼下垂の術前・術後の写真
眼瞼下垂の術前・術後の写真
挙筋前転術+下睫毛内反症の術前・術後の写真
※写真掲載については患者様の同意を得て、掲載しております。
【挙筋短縮術】
まぶたを持ち上げる機能(眼瞼挙筋)が残されている場合に、この筋肉を短縮して瞼板に縫合する方法です。
緩みが出にくく、強力にまぶたを持ち上げることができます。*術後にある程度の腫脹や内出血を生じますが、2〜3週間で改善します。
【挙筋腱膜タッキング】
腱膜性眼瞼下垂や先天性眼瞼下垂に幅広く用いられる方法です。
挙筋腱膜のズレを整復する手術で最も簡単な術式です。腱膜組織を切らないため術後の腫れを抑えることができ、早期に日常生活にもどることが可能です。【挙筋腱膜前転法】
現在多くの医療機関で広く実施されている眼瞼下垂手術の主流とされる術式です。瞼板から腱膜の剥離を行い、次に腱膜とミュラー筋の間を剥離し、腱膜を前転させて瞼板に固定します。
【ミュラータック法】
硬い挙筋腱膜から軟らかいミュラー筋を剥離してミュラー筋を縫い縮め、瞼板に固定する方法です。術後の仕上がりが自然なラインになります。軽度から中等度までの症例に適応があり、重度の症例には対応できないことがあります。
【前頭筋吊り上げ術】
前頭筋吊り上げ術は、眉毛や額を上げる前頭筋とまぶたをつないで、眉毛の動きによってまぶたを上げる方法です。挙筋機能が残っていない場合などに行われることが多いです。
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眼瞼内反症の手術
切らずに縫合する埋没法や切開法など症状にあわせた手術方法で症状を改善することが可能です。
いずれも日帰り手術が可能で、所要時間は30分程度です。【埋没法】
術後の腫れが少なく、早期の社会復帰が可能です。短時間ででき、多くの方に効果があります。ただし、中には再発する場合もあり、内反の程度の強い方には別の方法で手術を行う場合もあります。
【切開法】
皮膚と皮下組織を切除し、瞼板に縫い付けます。術後は内出血を生じ眼が腫れます。ただし、埋没法と違い、自然に二重が消失することが極めて少ないという大きな長所があります。
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眼瞼外反症の手術
まぶたの弛緩が原因となる場合は、下まぶたの外眼角を引き上げて再建する「Lateral Tarsal Strip (LTS=ラテラル・ターサル・ストリップ)法」を行います。
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霰粒腫・麦粒腫の手術
化膿が進んでしまっている場合には、切開して膿をだす必要があります。局所麻酔などをして注射針やメスで小さく切開し膿を摘出します。
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二重まぶたの手術の糸の除去
美容外科で受けた二重まぶたの手術の糸が眼球に接触し、傷をつけている場合、糸を除去する必要があります。局所麻酔の上、除去します。
自費診療となり、33,000円(税込)となります。